少し前、先月のお話しですが、佐藤、あるスーパーにたまたま立ち寄った際、大変驚きました。
なぜなら、そこにはシマエビが売られていたからです。
シマエビと言いましたら、佐藤の大好きな食べ物の一つでありまして、佐藤的には「キングオブエビ」と考えております。
毎年、年末年始用にお取り寄せをしていただくのが楽しみなのですが、それ以外の季節では口にする機会がありません。
そうそう見るものでもありませんし、お取り寄せをするとなればなかなかの費用にもなりますので、佐藤の中ではお正月の特別感が強い大好きなエビというポジションなのです。
それなのにもかかわらず、そちらのスーパーではなんと、なんとなんと、さらっと鮮魚コーナーにありまして、しかも生のままのシマエビと茹でたシマエビ、両方が売られておりました。
しかもですね、何という素晴らしいことか、けっこうな安価で販売されていたのです。
大きさとしては小型でありましたが、それなりのグラム数でありましたので、それらを踏まえますとかなりお得と言える状況でした。
店内に足を踏み入れた後、売場にある商品を見ながらあれこれと思いつつ歩き、シマエビを発見したその瞬間はですね、
「へぇ~、色々と新鮮なものがたくさんあるなぁ」
「本マグロかぁ、いい色してるなぁ」
「ホタテもプリッとしていて美味しそう」
「ホッケは焼いたら最高だねぇ」
「シマエビとはこりゃいいね」
「えっ?えっ!えっ!?シ、シ、シマ、シマシマシマ、シマエビィィィ~!?」
と、いう感じになったのです。
(佐藤のみで訪れておりましたので全て頭の中に浮かんできていた言葉です)
そちらのお店、普段はそう立ち寄ることのないスーパーでありますし、佐藤の自宅からは離れておりますので、全くのノーマークでありました。
鮮魚に力を入れているお店であると認識はしておりましたが、まさかこのような時期にこんな価格でさらっと最高に美味なる味わいのあのシマエビを食べられるチャンスが目の前にあるとは、とても嬉しく、本当に驚きの状況と言えます。
しかしながら、残念なことに、その日のその後の佐藤の予定、夕食の献立、諸々を考慮しますと、鮮度の維持を含め、その場で購入するかどうかはかなり悩ましい展開でありました。
買って買えないことはない、でもどうしよう、そんな状態だったのです。
そして、一つ確実に言えるのは、その日よりも翌日の方が色々なことを考えてもシマエビを購入するのにはより良いスケジュールでありました。
どうしようか。
佐藤はスーパーの中を5周ほどしながら、考えました。
シマエビを食べたいですかと問われたとしたら、食べたいですか、までいく前に、シマエビというキーワードの時点で「食べたいですっ!!」と即答することでしょう。
でも、諸々のあれこれが、迷わせます。
どうしよう。
食べたいな。
夏のシマエビ、いいな。
ビールとシマエビ、いいなぁ。
ビールとシマエビと枝豆、いいなぁ。
『夏の夜 暑さ楽しむ シマエビと』
なんだか一句出てきてしまった。
暑さはほどほどが良いけれども、シマエビがあれば本当に楽しめるのかもしれない。
でも、なぁ~。
と、迷いに迷って悩みに悩み、怪しい雰囲気満点で店内をあちこちウロウロしていたおじさん佐藤は、決めました。
よ、よし!
うむ!
今日は…!
や、やめておこう…。
明日はそんな予定ではなかったけれども、スケジュールを少しばかり変更して、買いにこよう…!
これが、その当日の佐藤の決断でありました。
翌日であれば、より確実にゆっくりとシマエビを楽しめるのは間違いないのです。
遠回りになることなどは気にせず、翌日にはシマエビを買う目的のためだけにここに来よう、そう決めました。
さて、その次の日です。
佐藤は予定通り、お店に行きました。
他のどこにも立ち寄らず、何も見ず、真っ直ぐに鮮魚コーナーへと向かいます。
他の魚や貝類には目もくれず、シマエビだけを目指したのです
佐藤は、最短距離で昨日シマエビを発見した場所に辿り着きました。
そこには…。
そう、そこには…。
シマエビは……。
ありませんでした!!
「な、ないっ!生のものも、茹でてあるものも、何も、どこにもシマエビがないっ!!」
佐藤、取り乱しそうになるのを何とか堪えまして、冷静になりました。
「も、もしかしたら、別の場所にあるのかもしれない…」
そう考え、鮮魚コーナーを端から端まで全てをよく確認したものの、結局シマエビはどこにもなかったのです。
これは、大変に残念な結果でありました。
やはり、シマエビというのはそう簡単にいつでも食べられるものではないのか…、そんな思いが頭の中に浮かんできます。
一方で、昨日には確かに、確かに佐藤はシマエビを見たわけであり、食べるチャンスは目の前にあったのです。
こうなりますと、どうにもこうにも、昨日購入しなかったことが悔やまれます。
「今日は完全にシマエビ気分だったのに…」
佐藤は落ち込みましたが、その後の予定もありましたのでいつまでも店内でがっかりしているわけにもいきません。
空っぽの買い物かごを持ったまま、鮮魚コーナーで立ち尽くしているわけにはいかないのです。
それならばと佐藤は考えまして、何か、他に何かないものかと売場をよく見ましたら、なんと「朝獲れのヒラメ」を発見いたしました。
この「朝獲れ」というシールがかなりポイントでありまして、実際のところはある程度の熟成をすることで魚も美味しくなるとはわかっているものの、新鮮第一としてそれならではの美味も味わってみたい、そう思ったのです。
しかも、見た目は大変立派であり、エンガワもついていて、お得感が満載でありました。
サクのままでしたので、自身で切る必要はあったものの、シマエビがなくてもこれならば楽しめそうな気がします。
佐藤は、ヒラメはお刺身の中でもトップクラスに好きなのです。
と、いうわけで、佐藤はそのヒラメを購入して自宅へと帰り、こう言いました。
「シマエビはなかったんだ」
この佐藤の言葉には、
「え~?そうなの?それは残念だったね、せっかくのチャンスだったのに」
という気遣いの言葉が周囲からは返ってきたものの、
「でも、その代わりにヒラメを買ってきたよ!」
との佐藤の宣言には、
「……」
という感じで若干の沈黙時間がありましたが、それでも何でも、佐藤はヒラメを楽しもうと心に決めたのです。
特に、佐藤が考えていたのはその切り方でした。
若かりし頃には日々(ごく簡単な)料理をして過ごしていたとはいえ、もう長らくそのような毎日とは遠ざかっている佐藤、包丁の扱いにはやや不安があります。
しかしながら、せっかくの良いヒラメですので、単純に切るのではなく、より美味しくいただくために薄造りにしたいと考えたのです。
ただ、佐藤、そのような切り方をしたことは一度もありません。
基本的には、怪我をしない、安全第一が大前提でありますので、包丁を使う際には自分の方に刃が向かないように心がけつつ切ります。
つまり、左手で食材を押さえ右手に包丁というシチュエーションの中で、意識としてはやや右側に向けて切ることになります。
そうしますと、万が一に手が滑ったり、食材がゴロンと動いたとしても、包丁の落下地点には何もなく、安心なのです。
この手法を採用することで最後まで美しく均等に食材を切れるのか、という課題はひとまず置いておくことにしまして、とにかく、これまでにはそのように包丁を扱ってきました。
ところが、今回チャレンジするヒラメの薄造りはですね、右から左に向かって、そう、佐藤自身の手に向け包丁を滑らせるようにして刃を入れていくことになるのです。
これは、慣れない佐藤からしますとなかなかのコワさでありました。
その上、包丁はしっかりと切れるものですので、もしものことがあれば、休日の暑い昼下がりに涼しい室内でグルメ番組を見ながらヒラメを楽しむどころではなくなってしまいます。
それでも、どんな時でも何であっても僅かでも、新たなチャレンジが自らを高め、新たな視点を生み、それがやりがいや楽しさになり佐藤自身のためになってきた日々があるのは確かなのです。
ここはより美味しくいただくためという最重要ミッションもありますので、佐藤は勇気を出して薄造りを実践いたしました。
結果としましてはですね、はい、けっこう、難しかったです…。
ありのままをお伝えするとしましたら、薄造りと呼べるものは全体の6割程度でありまして、序盤の2割ほどはかなり慎重に包丁を進め且つドキドキしていたせいか厚造りになってしまいました。
また、残りの2割程度は、身が少なくなっている中で切るのが大変になり、それ以上の無理はリスクが高まると判断しまして、これまでの佐藤がそうしてきたように上からやや右方向へとストンと切る方針にチェンジしましたので、ごく普通のお刺身となったのです。
肝心の味の方はどうであったかと言いますと、ありのままにストレートにお伝えしましたら、次のようになります。
すっごく美味しかったです!!
これが、本当に本音で心の底から感じた佐藤の思いとなっております。
薄造りにしたものは、特に美味でありました。
新鮮さを存分に感じ、あっさりとしていながらもその中に旨味が溢れてくるヒラメであり、白身の良いところが凝縮されており、食感や香りも含めて大変に美味しくいただいております。
厚造りや通常の切り方となった部分におきましては、やはり食べた際の味の感じ方に影響は出ていたものの、ヒラメそのものの良さのおかげで美味しく食べることができました。
エンガワも、そのこりこり感と甘みが非常に美味でしたね。
そんなわけで、シマエビを食べられなかった悔しさはありつつも、ヒラメを楽しむことができ、薄造りの技術も僅かに習得した佐藤でありました。
それ以降、今回ご紹介したスーパーのことがかなり気になってしまいまして、すでに何度かは訪れております。
これは、もしかしたらシマエビがあるかもしれないという期待と、また美味しいヒラメを食べたいという気持ちと、時にサザエのように道内ではあまり見ない食材に出会えるためです。
しかし、日々のお買い物ルートからは大きく外れるため、車を走らせている中で立ち寄ることを提案すると、3度目くらいからは、「最近行き過ぎでしょ…。もういいよ…」との声が聞こえてきております。
行こうと思えばいつでも行けるものの、そう頻繁には訪れることはないのかもしれませんが、今後も新鮮な魚介類をチェックしていきたいと考えているところです。
結果的には楽しかった今回の出来事でありましたが、一連の流れを振り返る中でふと思い出したことがありました。
それは、かなりの昔に占い師の方に鑑定していただいた時のことです。
ある地域にて著名な方であり、当時の印象としては色々と当たっている点が多いなぁと感じていたのですが、こんなことをおっしゃっていました。
「もし、冷蔵庫の中にケーキが一つあったとして、あなたならどうしますか?」
う~む、と佐藤が回答に迷っていると占い師の方は言いました。
「食べたいなら、バクッと、バクッと食べなさい。誰かのケーキかもしれないとか、そういうことは考えずにね」
え~、でも…、と佐藤が考えていますと、さらに続けました。
「もし、食べてしまってからそのケーキが誰かのもので困っていたなら、あなたがその人に二つ買ってあげればいいだけのこと。あなたにはそういう生き方が合っているし、運を引き寄せます」
な、なるほど~、と感心しまして、確かになぁ、とも思えました。
なんとなく、今、この年齢になってみてからの方が、占い師の方がおっしゃっていた考え方はより佐藤的な毎日の歩みにマッチしているように感じます。
と、いうことで、うまくいかなくても何かを得られるという観点はもちろん持ちつつも、次にシマエビを見つけたら思いのままに購入します!!(笑)
ケーキをバクッといきたい場面でも、シマエビでも、誰かのことを考えるとかの前にまずは自身の体重を気にしなければいけないという課題はありますが…。
それでは。