皆様は、普段お買い物をされる際、どのような方法でお支払いをされますでしょうか。
いくつもの手段があるかと思いますが、佐藤の場合、ここ数年はほとんどがクレジットカード払いとなっております。
そのため、日頃から佐藤の財布の中にはあまり現金は入っておりません。
そんな佐藤、少し前のことですが、業務終了後に、ショッピングモール内にある有名なドーナツチェーンを訪れました。
なぜかと言うと、とてもポップで丸い小さなドーナツを購入するというお使いがあったからです。
当初、ごく普通にお店で注文をして購入しようと考えておりました。
ところが、そのお店はトレイを自身で持ち、好きなドーナツを取ってからレジへ向かうというシステムだったのです。
そのようなシステム自体は特別驚きませんでしたが、困ったのは目的である小さくて丸くてポップなドーナツを発見できなかったことでした。
おかしいなと思い、よく見てみると、たくさんのドーナツが置かれている棚とは反対側に別のコーナーがあったのです。
説明が書かれていましたので読んでみましたら、そちらのお店では詰め放題になっておりました。
小さくて丸くてポップなそのドーナツは、普通のチョコがかかっているものもあればイチゴチョコもありますし、中にホイップが入っていたりといくつもの種類があるのですが、好きなものを詰めてよいシステムになっているのです。
しかも、他のお店であれば、8個入りが税込で302円なのに対し、そちらのお店では同じサイズの容器を同じ価格で購入すればいくつ詰めてもOKと書かれています。
さらによく説明を読みましたら、9個~12個くらいは入ると書かれておりました。
おっ、これはお得!と、佐藤は素直に思いましたし、そうなればできるだけ多く入れることにチャレンジしたくなるのが当然の心情です。
そんなわけで、佐藤はその小さなドーナツを容器の中に詰め始めました。
1個、2個、3個となるべく隙間なく詰めていきます。
4個、5個、6個と順調に詰めることができました。
ただ、8個、9個、10個ときたところでかなり厳しくなってきます。
なるほど、他のお店ではその容器に8個入りで販売されているのがよくわかりました。
9個目あたりからは余裕がなくなってきて、10個目を入れた時にはバランスもいまいちな状況になっています。
詰め終わった際には透明でドーム型のふたを装着しなければならず、詰め放題の説明のボードには、「ドーナツやふたはつぶさないでね!」と書かれておりました。
佐藤、注意書にあるような状態にまでしようとは思っておりませんでしたが、12個ほどは入ると書かれているのに、10個で終わってしまうというのは切ないものがあります。
佐藤は、なんとかして残り2個をねじ込もう、いえ、工夫で乗り切ろうと考えたのです。
11個目までは他のドーナツの位置をずらすなどして無事に入りましたが、最後の12個目がどうにも大変で、入れてものせてもころんと転がってきてしまいます。
上にちょこんとのせてみたり、サイドの隙間に置いてみたり、あれこれ試すもののすぐにころりと容器から落ちてしまうのです。
佐藤、その辺からやや焦りが出てきました。
スーツ姿のぽっちゃりおじさんが必死になってドーナツを詰めているその姿を、客観的に捉えるとかなり滑稽だなと思えてきたのです。
周囲を見れば、通常のドーナツをトレイに入れるために並んでいるお客さんがたくさんいます。
さっさと、なんとかして詰めてしまおう。
そう思った佐藤は、チョコがかかっているドーナツにある僅かな突起を活用し、それを他のドーナツに引っかける形で12個目を安定化させることに成功いたしました。
ただ、そこではまだミッションコンプリートではありません。
ふたを装着しなければならないのです。
ところが、ふた、そして容器は、どちらも想像していたよりもかなり柔らかいものでした。
そのため、ふたに注意をすれば容器がぐにゃりと歪んでしまい、容器に集中すればふたがつぶれてしまうといった具合で、うまく装着できなかったのです。
あれ、う~ん、いやぁ、難しいなと四苦八苦していると、先ほどようやくのせることに成功した12個目のドーナツがころんと出てきてしまいました。
再びそのドーナツを容器に入れふたを装着しようと試みましたが、そこで手間取っていますと、やはり同じようにころりと転がって飛び出てきてしまいます。
…。
……。
これ、11個でいいかな…。
そんな思いも佐藤の頭の中には出てきたのですが、ここまできて12個を諦めるというのも大変悔しいものです。
思わず、近くの店員さんを呼んで、
「あの、先ほどは間違いなく、確実に12個目が入ったんですよ。でも、今はうまくふたを取り付けられなくて…。あの、12個目、ここで今食べてもいいですか?」
と、言ってしまいそうになりましたが、そこはぐっと堪えて、再びドーナツをのせてから、そ~っと、慎重に、それでいて的確に、かなりの集中力を持ってミッションに挑みました。
その時の佐藤は額にうっすらと汗が滲んでいるほどでして、集中したい気持ちと、周囲のお客さんの目が気になる思いとの間で、メンタル的な戦いが繰り広げられていたのです。
落ち着け。
落ち着け。
家に帰るまでが遠足なんだ。
ここが勝負なんだ。
アディショナルタイムこそ集中しなければ。
集中。
集中。
しゅ~ちゅ~~う。
パコッ。
うまくふたの装着が完了しました。
よしっ!
ほっとした佐藤は、そのふたが外れてこないように慎重にトレイの上に置き、その他の通常のドーナツを買うべく列に並び、あとは会計のみというところまできたのです。
いや~、ほんと、やっぱり最後まで諦めない方がいいな、小さくて丸くてポップなドーナツをお得に、しかも好きな種類ばかり12個買えたし、よかったよかった。
そんなことを思いながら、店員さんにトレイを渡しました。
すると、店員さんがこんなことを言ったのです。
「当店、現金とこちらにあるお支払い方法のみでのお会計となっております」
えっ…!?
佐藤、一気に汗が噴き出てきました。
財布の中には、普段からあまり現金を入れておりません。
しかも、ドーナツはあれこれと買いましたので、なかなかの金額になっておりました。
その他の支払い方法を見てみますと、PayPayや交通系電子マネーが記されておりましたが、佐藤の場合、それらの残高はおそらく200円ほどしかないのです。
財布の中身、一体どのくらいだっただろう…。
佐藤はかなり不安になりました。
懸命に努力し、知恵を絞り、最大級の集中力で12個のドーナツを入れ、繊細かつ大胆な手法でふたを装着したのに、ここにきて最後の難関が待ち受けていたのです。
佐藤、さきほどまでは汗が滲んでおりましたが、今度は汗が流れてきそうになりました。
遠足はまだ続いていたのです。
やはりその言葉にある通り、本当に家に到着するまでが遠足なのです。
アディショナルタイムもまだ続いておりました。
主審のホイッスルが鳴るまでは、試合は続いているのです。
佐藤、店員さんがドーナツを確認しつつレジ打ちをしている中でそっと財布を取り出し、お金を確認してみました。
た、足りるか…、間に合うか…。
ドキドキしながらお金を数えてみましたら…、
支払い可能でした!
正直なところ、そこまで余裕はありませんでしたが…。
それでも、かなりほっとしまして思わずガッツポーズをしそうになりましたが、周囲のお客さんからしますと、
「ねぇねぇ、あれ、さっきドーナツ詰め放題で必死になってたおじさんじゃない?たくさん入れたものだから喜んじゃってるよ、クスクス」
などと思われるかもしれませんので、心の中で嬉しさを表現しておきました。
佐藤が喜んでいたのは、12個を詰め切ったことよりも、お金が無事に足りたことなのです。
あ、いや、まぁ、それもそれで、初めてのお使いではありませんから、そこに喜んでいること自体がちょっと問題ではありますが…。
とにかく、無事にミッションを遂行することができてよかったのですが、現金や一部の電子マネーしか使用できない場合には、もっとお店の前に大々的に案内をしていただきたいものです。
ちなみに、支払い後に店員さんに確認したところ、佐藤がメインで使用しているクレジットカードに貯まっているポイントでの支払いは可能とのことでしたので、その点も、詰め放題に集中し始める前にわかるようになっていると助かるのになと思いました。
いずれにしましても、今回の件は無事にお金が足りましたが、やはりギリギリの運用はいけないなと感じております。
ただ、だからといって多額のお金を持ち歩くわけにもいきませんので、ちょっと使ったらその分を補充、くらいが一番良いのかもしれません。
近年は現金を使う機会が少なくなっているためついつい油断しがちですが、何かの時のためにも、少額であっても常に財布にはお金を入れておきたいと思います。
ところで、今回訪れたドーナツチェーンのメニューの中で佐藤が好きなのは「チョコレート」と「ダブルチョコレート」であり、これらが長年ツートップとなっているのですが、当日はなんと、一つもありませんでした…。
色々な意味での汗をかき、焦ったものの、自分の好きなドーナツは買えなかったという切なさがありましたので、どなたか心優しい方がいらっしゃいましたら、差し入れ、お土産を心からお待ちしております。
なお、佐藤がご紹介したツートップですが、これまでの経験上、僕も私も好きですと賛同してくださる方が非常に少ない状況です。
シンプルで且つチョコ感を存分に味わえるため佐藤は昔から大好きですので、もし同じお気持ちの方がいらっしゃるようであれば、ぜひご一報いただければと思います。
また、今回登場したポップで小さくて丸いドーナツを13個以上詰めることができるという方がもしもいらっしゃいましたら、ぜひともその手法を教えていただけますと幸いです。
それでは。