慣れないバス。~Awayだったあの頃は~

2025年11月14日金曜日

t f B! P L
こんにちは。佐藤です。

本日は、ある時にふと思い出した出来事について綴っていきたいと思います。

あれは、佐藤がぎりぎり高校生の頃、つまり、大学入学を控えていた時で、確か季節は2月か3月であったと記憶しております。

佐藤は春からの一人暮らしが決まっておりましたので、住む家も決定済みであったのですが、その時にはまだ引越し前であり、実家に住んでいたという状況でした。

どうしてだったのかその理由は明確には覚えていないのですが、地元の高校の同級生二人と共に札幌を訪れまして、夜になり、そこそこの時刻になった際に、佐藤が春から一人暮らしをスタートさせる家に行こうという流れになったのです。

友人の一人が部屋を見てみたいと言って、そこから行くことになった気がします。

ところがですね、まだまだ札幌の交通網についてはわからないことも多く、さらには夜になって暗い状況でしたので、その時にいた場所から家までをスムーズに辿り着けるかというと自信はなかったのです。

しかし、当時の自分達からしますと、なかなかの距離をタクシーでポンッと移動するのもためらわれまして、さてどうしようかとなったのですが、結果的にはバスで行くことになりました。

市内のあるバスターミナルに向かいまして、そこからの移動を試みたのです。

バスターミナルの存在自体は当時の佐藤も認識しておりましたが、複数のバス会社があり、また路線もたくさんありましたし、何よりもまだ一度も利用したことがなかったものですから、不安はかなりありました。

乗り場もいくつもあり、パッと見ただけではどこから乗るのが正解なのかが全くわかりません。

新居の住所と方向、そして若干の知識から何となくの絞り込みはできたものの、これだという決定打がないまま時間は過ぎていきました。

やがて、段々とバスの本数も少なくなってきまして、どうしようかと迷っていましたら、1台のバスがターミナルに到着したのです

すると、友人の一人が言いました。

「これ、乗っちゃえばいいんじゃないの?」

確かに、そこまでの情報収集と頭の中にある僅かな知識をミックスしますと、そのバスは佐藤の新居方面に向かうであろうと思われました。

ただ、当時の佐藤からしますと、「まだまだここはAway」という状況でしたし、時間的なことを考えても万が一間違っていた場合の方向修正が困難になると感じていたのです。

そうしましたら、もう一人の友人がこう言いました。

「とりあえず方向は合ってそうだし、違ったら降りればいいんじゃない?」

そんな会話があり、そのまま考えていてもどうしようもないのかもと思えてきまして、「じゃあ乗るか!」と言ってはみたものの、内心ではかなりドキドキしていたことを覚えております。

佐藤と友人二人が乗り込んで間もなくしてバスは出発し、バスターミナルを出ました。

なんと、外は吹雪いています。

より緊張感が増した佐藤は、心の中で大丈夫だろうか、これで全然違う方向に行ってしまったらどう修正しようと考えつつ、外の景色を注意して見ていたのです。

大きな通りに出て、佐藤の家へと通じる道路が見えてきました。

交差点があり、そこを右に曲がれば目的地へと向かえます。

ところが、です。

バスは、交差点を右折することなく、直進してしまいました。

一気にドキドキが止まらなくなる佐藤、吹雪の外を見て、こっちじゃないよな、本来はあそこで右だよな、と建物などを確認しながらしばし考えて、口を開いたのです。

「これ、このバス、やっぱ違うかも…」

佐藤の言葉を聞いて一瞬は表情が曇った友人達でしたが、すぐに、「でもさ、方向的には大丈夫なんじゃないの?ほら、今右折したよ?」とか、「バスって遠回りしたりするから、また本来の道に戻るんじゃない?」などとの会話になったのです。

佐藤が認識していた交差点では右折しなかったものの、友人達の言うように、しばらく進んだ後は確かに右に曲がりました。

つまり、方向だけで言えば合っています。

しかしながら、佐藤は一度も見たことがない、通ったことのない道をバスは進んでおりました。

その後も、記憶が曖昧ではありますが、全く馴染みのない道を曲がるなどして走行しておりましたし、辺りは真っ暗な上に吹雪いていて、段々と商業施設もなく交通量も少なめの住宅街になってきましたので、佐藤はいよいよこれはマズイのではないかと思ったのです。

このままでは目的地に着く気がしない、そんなことを友人達に伝えますと、さすがに焦ったようでして、三人一致の見解として「ここで降りよう」となりました。

外に出ると、雪と風のせいで一気に身体が冷えてきます。

周囲を見回してみても、そこがどこであるか全くわからず、ただ同じような景色の住宅街が広がっているだけでした。

佐藤が一人暮らしをする家を探していた時にも、一度も訪れたことのない場所です。

唯一の手がかりと言っても過言ではない、目印となる大きな道路はどこにも見えません。

「どうする?反対側のバス停に行ってターミナルまで戻る?」

吹雪の中で震えながら友人が言いました。

「だけど、もうこの後ってバスなさそうじゃなかった?」

もう一人の友人が道路の方を見て言います。

「歩く、か…?」

そう口にしてから佐藤はすぐに思い直しましたし、同時にほぼ同じタイミングで友人達も言葉を発しました。

「どっちに!?」

そう、ここはまだ、Awayの地なのです。

足元には雪がどんどん積もってきておりました。

風も強くなっています。

道路には車自体がほぼ走っておらず、人影も見えません。

来た道を歩いて戻る、それも天候と距離を考えればかなり大変そうでした。

もうタクシーしかない、そう思ったものの、その姿も見えません。

「とりあえず、とりあえず、家の方向に歩こう」

出した答えというよりも、それしかない状況でした。

何もせずにその場に留まっているわけにもいきませんし、ますます雪は強くなっています。

何となくの方向でも、そこに目指すべき道路や佐藤の新居が見えてくるかどうかはわからなくても、歩く以外に方法はありません。

三人でいたとは言え、まだ慣れない土地で、暗くて、強く吹雪いている中で、不安感がどんどん強くなっていったことはかなり鮮明に覚えております。

「うわ~!寒いっ!」

「風が強いっ!!」

「どっちに向かう!?」

風の音に負けないよう大きな声でそんなことを口にしながら、とにかく歩きました。

すると、佐藤はある光を発見したのです。

「あっ、あ、あれ!タ、タクシーじゃない!?」

佐藤が指差した方向を、友人達も見つめます。

「そうだ!タクシーだよ!」

タクシーと思われる車までは、おそらく100m以上はあったように思います。

吹雪の中でよくは見えませんでしたが、住宅街の中に登場したところを視界に捉えたのです。

佐藤と友人達は走り出しました。

このチャンスを逃すと、どうなるかわかりません。

雪が靴の中に入るのも気にせず、雪が顔にぶつかってくるのも気にせず、向かい風の中を懸命に走りました。

タクシーが近くなってきます。

そのタクシーは、ある住宅の前で停車していました。

もう少し、あともう少し、そんな位置にまできたところで、タクシーの後部座席のドアが閉まり、そして動き出しました。

乗せていたお客さんが降りたからです。

佐藤と友人達は焦りました。

動き出したタクシーに向かって大きなアクションで手を振り、視界が良くない中でどうにか気づいてもらおうとみんなで動いて声を出したのです。

タクシーはほどなくして、住宅街の十字路に差し掛かりました。

もし、左のウインカーを出して曲がれば、それは佐藤達から離れていってしまうということです。

そのまま一時停止の後に直進すれば、佐藤達の姿には気が付かないことでしょう。

右折してくれたなら、その先には佐藤達三人がいるのです。

声を出し、手を振り、ジャンプをしつつ走りました。

タクシーがさらに動きます。

ウインカーが点滅しました。

右です。

右折を知らせるウインカーが吹雪の中に灯ったのです。

「うわ~っ!こっちに来るよ~!」

友人が叫びました。

「おぉ~!こっちだ~!」

もう一人の友人が飛び跳ねながら声をあげます。

やがて、タクシーは佐藤達の目の前に来て停車しました。

ドアが開き、中に乗り込んだ時のほっとした気持ちは今でも忘れません。

こうして、無事にタクシーに乗ることができ、佐藤の新居へと向かったのでした。

運転手さんによると、お客さんを降ろした後には佐藤達がいた場所とは別の方向に行こうとしていたそうです。

それが、吹雪の中で手を振っている人達がいると気が付いてこちらに来てくださったとお話しをしてくれました。

結果的にはですね、バスを降りた場所から佐藤の家まではそう遠くはなかったのです。

大学入学後からはその界隈を通ることもありましたが、吹雪の夜であったとしても、最適な道を通ってショートカットをすれば、そこまで時間はかからずに家まで辿り着けたくらいの距離感であったとわかりました。

それでも、その当時の状況ですと、これはもう、なかなかの不安感でありまして、どうしようどうしようと思って色々なことを考えてしまったほどです。

バスにつきましては、その後にターミナルを頻繁に使うようになってからはまず間違うことはなかったものの、当時に乗車した路線は最終的に佐藤の家とはどんどん離れていくルートでしたので、あの時点で降りていて正解だったなと思います。

もしかすると、そのまま乗っていましたらより車通りも少なくてタクシーに乗ることもできず、かと言って家までも遠いというとんでもない事態になるところでした。

バスに乗る前にターミナルで教えていただくとか、おかしいなと思えば運転手さんに聞くなどをすれば良かったのですが、あまり何も考えずに行動していたあたりが当時らしいなと思います。

現代であれば簡単にバスルートや時刻表やバス停の位置などを全て調べられますし、自分達がいる場所についてもマップの機能ですぐにわかるわけですから、本日お伝えしたような状況にはまずならないことでしょう。

そう考えますと、当時からは相当な年数が経っているとはいえ、すごいことだなぁと思います。

今となっては、この出来事は良き思い出の一つです。

そして、このことがあった後に一人暮らしをしてからは、こんなところで迷いそうになったりバスを間違ったりしていたとは、と恥ずかしくなりましたが、教訓になったなとも思います。

実はそう離れていない場所に目的地があったとしても、様々な状況が積み重なればあっという間にピンチになってしまいますからね。

また一方では、困ったとその時には感じたとしても、実際にはそこまでではない、焦らず冷静に事態を把握すれば解決策はあるはず、そんな学びでもあるような気がします。

どうして今回この出来事を思い出したのか、それはいまいちはっきりとはわかりませんが、自宅内でのある会話から当時の友人のうちの一人の話題が出たこともあり、頭の中に浮かんできたのかもしれません。

不思議なものですね。

ちなみに、佐藤は大学へは普段歩いたり自転車で通学していたわけですが、ある冬の夜の帰り道にとんでもない、本当にとんでもない猛吹雪の時がありまして、まさかの自宅近くで遭難するのではないかというくらいに大変であったことがあります。

何とか無事に家まで辿り着きましたが、その当時に使っていた今では旧型も旧型の懐かしき携帯電話はあまりの寒さから小さな液晶画面の中に文字や数字が何一つ出てこない状態になっており、機能自体もフリーズしていたものの、ストーブの近くで温めたら復活したということがありました。

それもまた懐かしくもあり良き思い出でありますが、あの頃からの携帯の進化もすごいものだよなぁとあらためて思います。

今では携帯にせよ車にせよ自宅にせよ、色々な便利機能があり安全装備もたくさん備わっておりますが、どうぞ皆様におかれましてはこれから訪れる冬のシーズン中には油断することなく、日々安全にお過ごしください。

今ではここ札幌が完全なるHomeになった佐藤は、リラックス&集中で冬の期間を乗り切りたいと思います。

それでは。

QooQ